京都式地域包括ケアの進捗状況について

「京都式地域包括ケア」は、高齢者の方々が住みなれた地域で、
安心して暮らしていける地域づくりを目指し、本府が全国に先駆けて、
医療、介護、福祉のサービスを組み合わせることにより、
住みなれた地域で24時間、365日安心して暮らせる「あんしん社会」の構築に向け、
本年6月1日に、「京都地域包括ケア推進機構」を設立し、
オール京都体制でスタートさせた取り組みであります。
私は、「京都式地域包括ケア」の拠点となる地域包括支援センターについて、
府内99ケ所のうち12ケ所を訪問し現場の声をお聞きするなど
実態調査を行うとともに、地域包括ケアの取り組みが先進的と言われている
福岡県大牟田市を訪問し、担当職員さんからの聞き取り調査や
数箇所の地域交流施設の現地調査をさせていただきました。
本府における「地域包括ケア」体制構築の進捗状況は
その後どこまで進んでいるのでしょうか?
まず、「在宅療養あんしんネットワーク」の構築に重点的に取り組む、
とのことで、これは、在宅で療養する高齢者がいつでも必要な時に
安心して適切な医療サービスを利用できるよう、複数のかかりつけ医の選定や
体調に不安があるときなどに確実に入院できるよう、
あらかじめ登録病院を決めておくことなどを通じ、
住み慣れた地域での暮らしを支援していく、つまり高齢者の在宅医療を
支える基盤整備がねらいであると理解しています。
また、それぞれの地域で拠点となる「地域包括支援センター」という
名称についてもわかりづらいのではないか、と指摘をさせていただき、
私が現地調査する中ではやはり「わかりづらいのではないか」との
声が多いように感じておりますし、設置者である市町村も大事ですが、
同時に利用者の意見も大切だと思います。
次に、一人暮らしの高齢者が気軽に立ち寄れる、「いきいきサロン」の
設置について、8市町村で24カ所の設置予定であり、
将来的には各小学校区には一つは設置されることが望ましいが、
福岡県大牟田市では、人口12万人、22小学校区の地域に40ほどの
地域交流施設(高齢者の集まり場、茶飲み場)があり、
それらの多くは小規模多機能型居宅介護施設に併設されています。
なかなか大牟田市と同じようにはいかないと思いますが、
府内の小学校区は400以上で、設置予定である24箇所とは随分開きがあります。
実際に地域包括支援センターを訪問しての現場の声をお伝えしすると、
共通して言えることは、やはり恒常的な人手不足であり、
どうしても予防プランの作成に忙殺されてしまっている、ということです。
また、事務作業として例えば住民アンケートの回収や問い合わせへの対応、
役所に対して提出する書類の作成などに多くの時間がとられ、
包括的、継続的なケアマネジメントを行う業務にはなかなか手が
回っていないというものでした。
また、地域ごとの特色としては、まちなかではやはり一人暮らしの
高齢者が多く、あるセンターでは65歳以上の1/3が一人暮らしである
実態や精神疾患、虐待が増えているという声、郡部では
高齢者の移動が大きな課題であり、外出支援サービスなどを
通じて交通手段の確保が一番の課題だという声もありました。
そんな中でも、例えば左京区の岩倉地域包括センターでは、
独自に広報誌の発行や徘徊模擬訓練などの取り組みを行っておられました。
徘徊模擬訓練とは、認知症で徘徊する高齢者の方が発生したと想定し、
地域内での情報伝達や捜索活動を行う訓練のことです。
岩倉地域包括支援センターでは本年5月20日、
施設に入所されている高齢者の方が入所していることがわからなくなり、
生まれ育った八瀬に帰ろうとして施設からいなくなった、という想定で、
センターの職員さんが「徘徊訓練」と書かれた手づくりのTシャツを着て
約1時間半岩倉地域を徘徊しての訓練を実施されました。
約70名の方々が訓練に参加され、民生委員、老人福祉員、
社会福祉協議会の方、商店、一人暮らし見守りサポーター、
医療機関、事業所の職員の方々が模擬徘徊者に声かけを行い、
発見・通報された、というものでした。
初めて訓練を行っての感想としては、「スムーズに声をかけられた」
「実際の場面では今回のように声がかけられるか不安だ」等々といったもの。
大牟田市では、徘徊模擬訓練を市全体で行っておられます。
本府においてもモデル事業として、徘徊模擬訓練を
亀岡市や舞鶴市などが行われていると伺っておりますが、
本府全体にその取り組みを広げ、また継続していくべきと考えます。

改正NPO法への対応について

本年6月、国会において全会一致で可決された改正NPO法により、
これまで国税庁が担ってきたNPO法人への寄付の税制優遇を認める、
いわゆる認定NPOの「認定」権限が認証権限を持つ自治体に移管され、
窓口が一本化されるとともに、認定の要件が緩和され、
認定NPO法人になりやすい法制度が施行されることとなりました。
また、NPO法改正とあわせて、その認定NPO法人への寄付に対して
所得税や住民税の控除に関する新しい寄付税制も施行されることとなり、
より多くの寄附金がNPOに集まりやすい環境が整備されてまいりました。
では、これらの法改正に対し、本府ではどのように対応しようされているのでしょうか。
また、法改正や本府の対応によって、これからのNPO活動や
市民活動がどのように変化していくと考えられるのでしょうか?
これら法改正の動きは、まずそもそも、阪神・淡路大震災後、
ボランティア活動を支援する新たな制度としていわゆるNPO法が制定され、
発足後12年余りたち、NPO法人数が40000を超え、その存在感や
影響力が高まってきたことが背景としてあげられます。
また、NPO法人を税制面で支援するため設けられた
認定NPO法人制度でありましたが、その認定を取るためのハードルが高く、
認定NPO法人は全NPO法人の0.5%程度にとどまっているという実態がありました。
そして、いわゆる「新しい公共」の考え方に基づき、「新しい公共」の
担い手であるNPO法人や市民団体をさらに支援していこう
という動きが大きく影響しているものと存じます。
これは、行政機関や公務員だけではなく、草の根の市民が、
教育や子育て、まちづくり、防犯・防災、医療・福祉、消費者保護などに
課題やミッションを持って共助の精神で参加する地域の活動を
より積極的に応援していこうというものであります。
そして、これらを通じて、誰もが「居場所」と「出番」を実感することができる、
「一人ひとりを包摂する社会」の実現を目指しての取り組みの一環である
と私は理解しております。
ここで言う「包摂」とは、自分とは立場や意見が違う人たちも含め、
できるだけ多くの人々を社会の構成員として取り込んでいきましょう、
という考え方であります。
この考えは、現代社会において、これまで家族や地域といった、
人々が支えあうもとになっていた社会基盤が崩壊してしまったと
いわれている中、そうした支えを失って社会から孤立した人々を、
できるだけ多くもう一度社会の中に包み込み、そして社会参加を
促そうというものであります。
そして、「新しい公共」や「社会的包摂」の考え方の下
全ての国民に「居場所」と「出番」が確保され、NPO法人や市民団体など、
様々な主体が公共的な活動に参画する社会を再構築することにより、
それがひいては国民一人ひとりの生きがいや幸福感を高めることに
つながりうると私は考えています。
特に京都は、歴史的にも「新しい公共」の先進都市であります。
その象徴的なものとして、明治のはじめ京町衆が、日本初の小学校である
番組小学校を、かまど金と言われる寄進をして建設されたことがあげます。
そして、その京町衆の思いは、京都国際マンガミュージアムが
番組小学校であった元・龍池小学校を活用したものであり、
そのミュージアムの改修や運営に際して地元からの出資や協力があり、
その思いは現代にも受け継がれているものと存じます。
「新しい公共」は実は京都にとっては新しいものではなく、
ずっと以前から歴史的に地域に根付いて取り組まれてきたものであり、
京都人の思いや知恵のあらわれであると存じます。

さらに、その思いや知恵は公益財団法人京都地域創造基金にも
受け継がれていると思います。
この財団の取り組みで、私がおもしろいなあと思うものでは、
例えば、「カンパイチャリティキャンペーン」というものがあります。
これは、「あなたのカンパイが、まちの笑顔に生まれ変わる」をテーマに、
京都の飲食店と連携し、例えば、ある飲食店で通常生ビールが450円であったら、
それに50円上乗せして500円とし、その50円分は、例えば、
家計が苦しいとか親の病気などの事情で朝ごはんを食べられない子どもたちに
朝ごはんを食べさせる活動をされているNPOに寄附されるなどの
地域展開型チャリティキャンペーンを行っておられる取り組みです。
つまり、税制面だけではなく、寄附しやすい仕組みを工夫していくことが
大切である、ということをこのキャンペーンが示していると私は思います。
また、大震災の影響で、これまでNPO法人へ寄附していた
会社や個人の方々のお金が被災地支援にまわることで、
今後のNPO法人の運営は、今まで以上に財政的に厳しくなるのでは、
という懸念もあります。
この厳しい状況が予想される中、これら法改正に対する対応や
NPOや市民団体を、それらの役割や意義を原点に立ち返りながら
さらに支援していく必要があると考えます。

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