本年6月、国会において全会一致で可決された改正NPO法により、
これまで国税庁が担ってきたNPO法人への寄付の税制優遇を認める、
いわゆる認定NPOの「認定」権限が認証権限を持つ自治体に移管され、
窓口が一本化されるとともに、認定の要件が緩和され、
認定NPO法人になりやすい法制度が施行されることとなりました。
また、NPO法改正とあわせて、その認定NPO法人への寄付に対して
所得税や住民税の控除に関する新しい寄付税制も施行されることとなり、
より多くの寄附金がNPOに集まりやすい環境が整備されてまいりました。
では、これらの法改正に対し、本府ではどのように対応しようされているのでしょうか。
また、法改正や本府の対応によって、これからのNPO活動や
市民活動がどのように変化していくと考えられるのでしょうか?
これら法改正の動きは、まずそもそも、阪神・淡路大震災後、
ボランティア活動を支援する新たな制度としていわゆるNPO法が制定され、
発足後12年余りたち、NPO法人数が40000を超え、その存在感や
影響力が高まってきたことが背景としてあげられます。
また、NPO法人を税制面で支援するため設けられた
認定NPO法人制度でありましたが、その認定を取るためのハードルが高く、
認定NPO法人は全NPO法人の0.5%程度にとどまっているという実態がありました。
そして、いわゆる「新しい公共」の考え方に基づき、「新しい公共」の
担い手であるNPO法人や市民団体をさらに支援していこう
という動きが大きく影響しているものと存じます。
これは、行政機関や公務員だけではなく、草の根の市民が、
教育や子育て、まちづくり、防犯・防災、医療・福祉、消費者保護などに
課題やミッションを持って共助の精神で参加する地域の活動を
より積極的に応援していこうというものであります。
そして、これらを通じて、誰もが「居場所」と「出番」を実感することができる、
「一人ひとりを包摂する社会」の実現を目指しての取り組みの一環である
と私は理解しております。
ここで言う「包摂」とは、自分とは立場や意見が違う人たちも含め、
できるだけ多くの人々を社会の構成員として取り込んでいきましょう、
という考え方であります。
この考えは、現代社会において、これまで家族や地域といった、
人々が支えあうもとになっていた社会基盤が崩壊してしまったと
いわれている中、そうした支えを失って社会から孤立した人々を、
できるだけ多くもう一度社会の中に包み込み、そして社会参加を
促そうというものであります。
そして、「新しい公共」や「社会的包摂」の考え方の下
全ての国民に「居場所」と「出番」が確保され、NPO法人や市民団体など、
様々な主体が公共的な活動に参画する社会を再構築することにより、
それがひいては国民一人ひとりの生きがいや幸福感を高めることに
つながりうると私は考えています。
特に京都は、歴史的にも「新しい公共」の先進都市であります。
その象徴的なものとして、明治のはじめ京町衆が、日本初の小学校である
番組小学校を、かまど金と言われる寄進をして建設されたことがあげます。
そして、その京町衆の思いは、京都国際マンガミュージアムが
番組小学校であった元・龍池小学校を活用したものであり、
そのミュージアムの改修や運営に際して地元からの出資や協力があり、
その思いは現代にも受け継がれているものと存じます。
「新しい公共」は実は京都にとっては新しいものではなく、
ずっと以前から歴史的に地域に根付いて取り組まれてきたものであり、
京都人の思いや知恵のあらわれであると存じます。

さらに、その思いや知恵は公益財団法人京都地域創造基金にも
受け継がれていると思います。
この財団の取り組みで、私がおもしろいなあと思うものでは、
例えば、「カンパイチャリティキャンペーン」というものがあります。
これは、「あなたのカンパイが、まちの笑顔に生まれ変わる」をテーマに、
京都の飲食店と連携し、例えば、ある飲食店で通常生ビールが450円であったら、
それに50円上乗せして500円とし、その50円分は、例えば、
家計が苦しいとか親の病気などの事情で朝ごはんを食べられない子どもたちに
朝ごはんを食べさせる活動をされているNPOに寄附されるなどの
地域展開型チャリティキャンペーンを行っておられる取り組みです。
つまり、税制面だけではなく、寄附しやすい仕組みを工夫していくことが
大切である、ということをこのキャンペーンが示していると私は思います。
また、大震災の影響で、これまでNPO法人へ寄附していた
会社や個人の方々のお金が被災地支援にまわることで、
今後のNPO法人の運営は、今まで以上に財政的に厳しくなるのでは、
という懸念もあります。
この厳しい状況が予想される中、これら法改正に対する対応や
NPOや市民団体を、それらの役割や意義を原点に立ち返りながら
さらに支援していく必要があると考えます。